糖質制限を長期間に渡って続けた場合の安全性について論争になっているようです。

私自身も、以前に江部康二の糖質制限革命を読むなどして、糖質制限の正しさを確信しているところでしたが、糖質制限で「老ける」「寿命が縮まる」との研究結果が発表されるなどして、「糖質制限食の第一人者」である江部氏の主張が揺らいでいるようにみえます。

まず、週刊新潮(2018年4月5日号)に次の記事が掲載されました。

糖質制限で「老ける」「寿命が縮まる」… 東北大が研究
短期的な痩身効果という点では糖質制限に勝るダイエット法はない。それは多くの専門家の一致した見方で、身を以てその効果を経験したという方も多かろう。問題は、長期に亘って糖質制限を行った場合の安全性が科学的に証明されていないこと。故にこれまで、医療関係者の間では、リスクの有無を巡って議論が交わされてきたわけだが、今回、糖質制限の危険性を示す決定的とも言える研究結果が発表された。

「糖質制限が痩身に繋がるメカニズムそのものに老化が促進される要因があるのでは」との指摘があるなど、不安になる内容です。

これに対して、東洋経済オンライン(2018年03月31日)で、江部康二氏本人が反論しています。

糖質制限「老化説」が抱える根本的な大問題 マウス実験では「ヒトの健康」はわからない
そもそも、東北大学大学院・農学研究科のグループ は根本的な間違いを犯しています。それは、「そもそもマウスの食事実験の結果はヒトには当てはまらない」という基本的なことを無視していることです。

ネズミの主食は穀物(=低脂質・低たんぱく食)なのだから、マウスの代謝に合わない(主食でない)糖質制限食(高脂肪・高タンパク食)を与えれば、すべての代謝が狂って老化が進み寿命が短くなるのも当たり前だとの主張です。同じく草食のゴリラを例に挙げて、ゴリラにステーキを与えるようなものだとも言っています。

糖質制限の正しさについての主張というよりは、「マウスにより調査結果だから関係ない」という変化球の反論ですが、「糖質制限食の第一人者」である医師が言っていることなので、まあそんなものかと納得してしまいます。

上記記事では、まとめとして「糖質制限食こそが老化を防ぐ」として、さらに「全世代について言えることですが、特に50代以降の健康維持の鍵を握るのは「糖質制限」だと言っても過言ではありません」と断言しています。

しかしながら、糖質制限の正しさについては、従来と同く『ランセット』という医学雑誌のオンライン版に出た記事を拠り所にしているのみです。

糖質の取りすぎは健康寿命を縮めると報告されており、一流医学雑誌『ランセット』にも「炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇」という記事が出たことについては、昨年10月3日の記事(「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文)でご紹介しました。『週刊新潮』のタイトルとはまったく逆に、糖質を制限しないと「老ける」「寿命が縮まる」というのが国際的な新常識なのです。

わざわざ、「一流医学雑誌『ランセット』にも」などと書いてしまったところに、権威にすがるような苦しさを感じるのは、うがった見方をしすぎでしょうか。

すると、週刊新潮(2018年4月12日号)にすかさず反論記事が載りました。

それでもやりますか?寿命が縮む「糖質制限」 元祖提唱者の病歴
糖質制限の根幹を揺るがす実験結果であったため、こうして「全否定」せざるを得なかったのだろうが、「マウスに人の食べ物を与えると、代謝が破綻して老化が進み短命になるという主張は明らかな間違いです」 実験を行った東北大の都築准教授はそう語る。

「江部さんの“マウスと人間は違う”という主張については、子供みたいなレベルで呆れてしまいます。あまりにもバカバカしい」なんていう医師のコメントも出ています。

「子供みたいなレベル」の反論をしてしまったことで、江部氏側の旗色がいきなり悪くなってしまったように感じられます。ちょっとした袋だたきの様相を呈してきました。

私の中で、江部氏は終わったとの印象を抱いてしまった今回の論争ですが、週刊新潮の記事にはさらに興味深いことが書かれています。

実は十数年前、アメリカで糖質制限ダイエットが一大ブームを巻き起こしたことがある。提唱した心臓病専門医の名を冠し、「アトキンス・ダイエット」として爆発的に広まったが、2003年に当のアトキンス博士が死去すると、急速に人気が衰えた。

実践こそしなかったものの、アトキンス・ダイエットという言葉は知っていました。しかし、驚くべきなのはアトキンス博士が「見事な肥満体」であったとの話。

「アトキンス氏は自らも過剰な糖質制限を実践していたが、死去後に彼の健康診断書が流出した。そこには身長180センチに対し、体重117キロとあり、見事な肥満体であることが判明。心臓発作や高血圧の病歴があったことも報じられた。ちなみに彼は“転倒”して死んだことになっている」(在米ジャーナリスト)

本人が肥満で心臓発作や高血圧の病歴があるからといって、その主張を全否定されるものではないですが、それにしても「自らも過剰な糖質制限を実践していた」のに肥満というのはおかしいです。糖質制限をしなければもっとひどい肥満だったのかもしれないですが・・・。

そんなわけで、今回の論争には決着が付いた感ありですが、東洋経済オンライン(2018年4月13日)に注目の記事が載っています。

最先端の医学では「白米は体に悪い」が常識だ UCLA医学部助教授が教える「不都合な真実」
日本人は何事も「食べすぎなければ大丈夫」というあいまいな落としどころを好む傾向があるが、残念ながら、日本人が大好きな白米は「少量でも体に悪い」と言ってもいいだろう。エビデンスによると白米の摂取量が少なければ少ないほど糖尿病のリスクが低いことが報告されているからだ。

この記事では、『精白されている「白い炭水化物」は、血糖値を上げ、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気が起こるリスクを高める可能性がある』のに対し、『玄米のように、精製されていない「茶色い炭水化物」の多くは食物繊維や栄養成分を豊富に含み、複数の研究で肥満や動脈硬化のリスクをむしろ下げる』と言っています。

詳しくは、UCLA助教授の津川友介氏による『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』に書かれていますので興味がある方はそちらもお読みください。

玄米や、全粒粉のパスタなら食べてもいいと言うことですが、個人的にはそんな炭水化物なら別に食べないでいいって気分。やはり、基本は糖質制限で、朝昼は麦入りご飯などを少量という今までのやり方を基本にしたいです(以前に、糖質制限・腸内環境改善のための主食で記事にしています)。

ただ、蕎麦は「茶色い炭水化物」のグループなので、十割蕎麦や二八蕎麦ならいいかな。ちなみにこの記事では、日本人はずっと白米を食べてきたのだから、「日本人では違うはずだ」という主張も否定されています。