「ジムに通う人の栄養学 スポーツ栄養学入門」という本を読みました。かなり専門的な記述も多く、ジムに通う一般人には少し難しいようにも思いますが、頑張って読み進めてみるととても興味深いことが書かれています。
たとえば、筋肉・筋量増強が目的の場合の、たんぱく質の必要量について。この本では、様々な実験の結果を示した上で、「運動で筋肉を鍛えるときに高たんぱく食が望ましいことを支持する科学的な根拠はないといえる」としています。
さらに結論として、「エネルギーが不足しないような食事を摂っていれば、筋肉増強が目的であっても、たんぱく質の多い食事を心がける必要はないし、プロテインのサプリメントを摂取する必要もない」としているのです。
ここで言っているのは「鶏のササミとかを食事でいっぱい摂っていれば、プロテインは不要」だという話ではありません。エネルギーが不足しないような食事を摂っていればそれでよいというのです。
筋肉増強を目的として、せっせとプロテインやアミノ酸を摂っている私からすれば、衝撃的ともいえるお話しです。どこまで素直に受け入れるかはさて置き、一読の価値はあると思います。
体脂肪を1キロ減らすには、何カロリーの消費が必要か
さて、ここからは記事タイトルにした「1キロ痩せるにはどれだけカロリーを消費すればよいのか」というお話しです。
最初に紹介したジムに通う人の栄養学 スポーツ栄養学入門では、体脂肪を減らしたいダイエッターにも役立つことが書かれています。
体脂肪を1キロ減らすにはどれだけのカロリー消費が必要かなどについては、私も曖昧な知識しかなかったのでですが、この本で改めてしっかりと学ぶことができました。重要なポイントなどを引用しつつ、私なりに理解できたことを書いてみたいと思います。
まず最初に理解しておくべきなのは「体脂肪は1kgあたり約7000kcalである」ということです。
そして、ランニングによる消費カロリーの目安は体重×距離といわれています。たとえば、体重65kgの人がフルマラソン42.195kmを走れば2743kcalを消費するというわけです。
単純計算でいっても、フルマラソン約2.5本でようやく体脂肪が1kg減るということになります。
ジムに行くと、「レッスンに○本出て頑張ったから2キロも痩せちゃった」などと話しているのを聞くことがありますが、残念ながらそれは汗をかいて一時的に体重が減っているだけ。
繰り返しになりますが、体脂肪を1kg減らすには少なくともフルマラソン2.5本分の運動量が必要なので、1日で1kg痩せようとしたら100kmは走らないといけないわけです。しかも、歩くようなスピードじゃなく、ちゃんとしたランニングのペースでの100kmですから、そんなことが可能な人はそもそも太っているはずもなく・・・。
炭水化物、脂肪、たんぱく質の補完関係など
ここまでは、ちょっとダイエットに詳しい人にとっては当たり前の話でしたが、以下はちょっとお勉強です。
まず、三大栄養素である、炭水化物、脂肪、たんぱく質は、体内で補い合ってエネルギーを供給している。しかし、三大栄養素がそれぞれを互いに補えるわけではなく、次のような関係になっている。
・たんぱく質は、炭水化物にも、脂肪にも変換される。
・炭水化物は、脂肪に変換される。
上記により、たんぱく質にせよ、炭水化物にせよ、消費されずに余ったエネルギーは脂肪に変換される。そして、この脂肪が体脂肪として蓄積する。
また、脂肪は、たんぱく質にも、炭水化物にも変換されない。したがって、脂肪を減らすにはエネルギー源として消費してしまう以外に方法はない。
体脂肪は1kgあたり約7000kcalである。よって、運動で7000kcalを消費すれば体脂肪が1kg減るかといえば話はそう簡単ではない。運動でエネルギー源として利用されるのは体脂肪だけでなく、炭水化物もエネルギー源であるから。
また、炭水化物がエネルギー源として利用される際に、筋肉が減少してしまうことがあるという事実も頭に入れておく必要がある。その仕組みは次のとおり。
『炭水化物は脳のほとんど唯一のエネルギー源なので、エネルギー源としての優先順位は最上位である。しかし、炭水化物は体内の貯蔵量が少ない。そのため、飢餓状態で炭水化物が不足すると、筋肉や内臓を作っているたんぱく質が、優先順位の高い炭水化物を体内で合成するための材料として消費される。そのため、飢餓状態では、体脂肪が減少するだけでなく、筋肉も減少してしまう。』
具体的な数値として、次のデータがデータが挙げられています。
1日のエネルギー摂取量が1000kcal以上の場合、減量前の体脂肪が30kgの人では体重減少の15%程度が除脂肪組織だが、減量前の体脂肪が10kgの人では体重減少の50%程度が除脂肪組織である。
たとば、体重が65kgで体脂肪率が15%だと、体脂肪は9.75kg(65kg×0.15)なので、私くらいの体格の場合、体重減少の50%程度が除脂肪組織ということになってしまいます(ただし、除脂肪組織というのは筋肉のみを指すのではないから、体重が1kg減ったら筋肉が0.5kg減るというわけではない)。
体重が1kg減っても、体脂肪はその半分しか減らないというのでは、体脂肪を減らしつつ筋肉量を増やすのはほとんど不可能にも思えてしまいます。この点については、筋肉をあまり落とさずに脂肪を落とすには、食べる量をあまり減らさないことが重要としています。
これは、減量前の体脂肪が30kgの人では、1日のエネルギー摂取量が1000kcal以上の場合には体重減少の15%程度が除脂肪組織だが、1日のエネルギー摂取量が450kcalのときには体重減少に占めるの除脂肪組織の割合が60%近いとのデータから導き出されている。
結局、体脂肪を落としつつ筋肉を付けていくのは、なかなか困難に思えます。それでも、上記のような理論を理解しておくのは大切なことであるはず。もっと勉強しつつ、理論と実践を両立させていきたいものです。